人工知能はどのようにして 「名人」を超えたのか?―――最強の将棋AIポナンザの開発者が教える機械学習・深層学習・強化学習の本質
人工知能はどのようにして 「名人」を超えたのか?―――最強の将棋AIポナンザの開発者が教える機械学習・深層学習・強化学習の本質
- 作者: 山本一成
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2017/05/12
- メディア: Kindle版
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☆☆☆
なぜ読んだのか
著者の思想が気になり読了何を学んだか
著者は,人工知能の開発に「教師あり学習」は必須で,それをぜひ覚えておいてください(p.130)と言うが,アルファゼロは「教師なし学習」であり,この説はあっさりと覆された.本書発行日からアルファゼロ発表まで僅か約7ヶ月で変化は速い..
ゲーム中に現れる局面の数が 1060 のオセロもまだ完全解析できていない.将棋は226乗,囲碁は360乗 (p.46)
人工知能に仕事を奪われるとよく聞くが,人間から機械へ交代する際は 一気 に進むだろう(p.68, p.118)
ディープラーニングの黒魔術たちは過学習を防ぐことを大きな目標としているものが多いようだ(p.99)
著者は,人工知能の開発に「教師あり学習」が必須ということをぜひ覚えておいてください(p.130)と言うが,「教師なし学習」のアルファゼロに覆された.アルファゼロ発表まで僅か約7ヶ月.変化が早い.
この本の中では,知能を目的に向かう道を探す能力(p.171)と定義し,『知能とは画像である』,『画像が知能の本質』」(p.107)と言うが,この命題は目が先天的に見えない人が画像という概念を理解していなければ知能が無いことになりはしないか?
目が見えない人も知能[目的に向かう道を探す能力]はあると思うので,この命題は言えないのではないだろうか.
アルファ碁は,ディープラーニング版打ち手予測器の対局3,000万回の結果から,「ディープラーニング版評価」に相当する勝敗予測器の作成を始めた(p.159)
「おそらく今後も、プログラムが動的に中間の目的を構築するようになるコードを書くことは不可能(中略)今のプログラミング言語は、人間に作られた、人間の都合に合わせたもので、人間の思考の限界を超えることはできない」(p.180)
やはり思考は言語に縛られているかもしれない だとすれば人工知能はプログラミング言語に縛られている
人間の理解を超えた人工知能に対しての「いい人理論」(p.200)は人間達の気休め程度にしかならず,問題解決には至らないのでは.
「論文によると,アルファ碁は次の相手の手を予想するのに,8手前くらいまで考慮するようになってたはず」(p.234)
人間の判断には,物語,歴史が大事なのかもしれない.では,どの位前の物語を考慮するべきか?
水平線効果とは
プログラムが読める手には限りがあり,その先を水平線の先にあるもののように考慮せずに,長期的に見ると問題がある手を選択してしまう問題(p.261)
コンピュータは論理が弱い,本当の意味での論理力は足りておらず,論理力は人間のほうがある(p.263)
「本当の論理力をつけるプログラムの書き方は,今の時点ではわかりません」(p.264)
ディープラーニングは社会や人間が感じていた様々な閉塞感を打ち破った. コンピュータに本当の意味での論理力が足りないということが,これから少しの間,人工知能の問題になりそうだ.そして,著者の言うように 「人間に残されたのは,言葉と論理しかないんじゃないかな」(p.283)なのだろう.
- どう活かすか
現実の世界でのシミュレート(未来を読む)は難しいので,実際に少し手を進め,未来を見ながら考えれば良いのかもしれない. その意味で,人生は多分,誰かが敵となり,負かしに来ることは稀で,自分が負けの局面を作ってしまう気がする.
形勢判断とそれによる攻守の切り替えのバランスが大事だろう.最も,人生ゲームの「勝ち」とは何かが重要だが.
人工知能が抽象的な学習をすることで,人間の生が色々と困難になっても変化できない人間が多いと思う(p.259)
ひきこもらない (幻冬舎単行本)
- 作者: Pha
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2017/06/21
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☆☆☆
なぜ読んだのか
著者の思想に興味があり読了何が書いてあったか
「ほとんどは自分が少し世界の見方を変えることで何かが変わったような気がするだけだ」(p.126)
生きづらそうにしている人を見ていると,その人の世界の見方に原因があるように思うことがしばしばある.
何を学んだか
不動産は自ら放棄することができず,維持費を払い続けなければいけない「ババ抜き」みたいなもの(p.188)らしいので注意したい.どう活かすか
来年はあまり真面目ではなく,力を抜いて生きてみようかな.難しそうだな.
実存主義とは何か
- 作者: J‐P・サルトル,伊吹武彦
- 出版社/メーカー: 人文書院
- 発売日: 1996/02/01
- メディア: 単行本
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☆☆☆
この本は,1945年10月,当時40歳のサルトルが,パリの「クラブ・マントナン」(マントナンとは「今」とか「現在」)で行った講演とそれにつづく討論.
人工知能の核心 (NHK出版新書 511)
- 作者: 羽生善治,NHKスペシャル取材班
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2017/03/08
- メディア: 新書
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☆☆☆☆
- なぜ読んだのか
羽生さんの人工知能の認識に興味があり読了.実は期待していなかったが, TensorFlow, Torch, Chainer (p.179)や,D-Wave(p.173)にも言及していて驚いた. 「Recurrent Neural Network」(p.144)等も理解されているようだ. 一方で,おわりに『攻殻機動隊』(p.229-231)にも触れていた.
羽生さんの整頓された整頓された思考から「エンジニアであった父」(『捨てる力 (PHP文庫)』p.139)の存在を感じる.
ディープマインド社とCEOのハサビス氏,「AlphaGo」を理解するための貴重な資料でもある.
ディープマインド社CEOハサビス氏の言葉
「人間の知性をコンピュータで再現することは可能」(p.104)
「脳が行っている作業で人工知能が行えないものはないはず」(p.172)
「森羅万象を説明できる」(p.231)
- 何が書いてあったか
人工知能の日進月歩の開発速度を強く感じた.
この本の企画から,今までにあった出来事を少しまとめる.
2015年 | 本書の元となる,NHKスペシャル「天使か悪魔か 羽生善治 人工知能を探る」番組制作開始 |
2016年2月 | 著者,取材班,ディープマインド社取材 |
2016年3月 | ディープマインド「AlphaGo」にイ・セドル氏敗北 |
2016年5月 | NHKスペシャル「天使か悪魔か 羽生善治 人工知能を探る」放送 |
2017年3月 | 本書第一冊発行 |
2017年5月 | 第2期 電王戦 PONANZA に佐藤天彦名人敗北 |
2017年12月5日 | 羽生棋聖 永世七冠達成 |
2017年12月5日 | ディープマインド「AlphaZero」 最強将棋プログラムelmoとの100局において、90勝8敗 |
2017年12月5日に発表される,AlphaGoZero の汎用化を羽生さんはこの本の中で,読んでいるかのようだった.
「もし,アルファ碁の探索の設定が詳らかになれば、将棋やチェスにも応用できる可能性があるのかもしれないと、考えています。そして、それが何を意味しているのかというと、チェスや将棋や囲碁は、競技としては違うけれども思考のロジックには共通のプラットフォーム(基盤)があるかもしれない、という可能性です。異なったルールであっても、思考や論理的な考え方そのものには、突き詰めると、根本的なところで共通するものが存在する。もしそうなら、それは「知性」そのものの汎用性を考える契機にはならないでしょうか。」(p.34)
AlphaGoは二段階で手を絞る(p.58)
1. 次の手を絞る(Value Network)
2. 局面ごとに,何手先まで読むのがふさわしいか判断(ポリシーネットワーク)
棋士の手の絞り方の第一のプロセスである「直観」のイメージが
「カメラで写真を撮る際、ピントを合わせるように、「これこそが問題の中心だ」と思うところにフォーカスしていくイメージ」(p.66)
は,具体的でわかりやすい.(p.66)
ここでいう「直観」とは「経験や学習の集大成が瞬間的に現れたもの」あるいは「今,自分はどこにいてどの方向に進めばいいのか」を大まかにつかむ"羅針盤"のようなもの.これまでの歩みやストックしているデータによって裏づけられている(cf.p.66)
「大局観」を使い,一手一手を検討することからあえて離れ,序盤から終盤までの流れを総括し,先の戦略を考える(cf.p.68)
羽生さんは,棋士が手を選ぶ行為は,美意識を磨く行為とほとんど同じと考えていると言い,
「美意識」を磨くことが将棋の強さに関わると言う.(pp.75-76)
人生においても,手を選択するために,「美意識」を磨いていきたい.
しかし,人工知能が示すように,われわれが「美意識」のなかでは認識できていない他のところに,確度の高い選択肢がある可能性(cf.p.82)があることを忘れてはならず,同時に人間は人工知能の影響を受け,美意識を変えていくのだろう(cf.p.97)
人工知能は正解を出す確率を上昇させているだけで100%正確,絶対的ではない.
しかし,僕も人間は人工知能を「信じていってしまう」と予測している.(cf.p.197)
それは,占いや宗教の信奉に似ているかもしれない.
だが,羽生さんが言うように,人工知能の判断を「絶対である」と信じないこと(cf.p.200)「絶対である」ではないこと,を知っておくべきと考える.
- 何を学んだか
改めて「大局観」を理解できた.
人工知能の判断がブラックボックスであることが,やはり大きな問題だ.
人工知能は両刃の剣だ.どちらに転ぶかはわからない.(cf.p.231) しかし,開発を止めることは出来ないだろう.「できるところから開発する」(p.175)無邪気さは,人間存在の本来の姿ではないだろうか.
- どう活かすか
私達は常に手を指している,勝敗やルールの存在が不明確な人生ゲームにも「直観」「読み」「大局観」は活かせる.
評価値の値を知っておくことで,大胆な形の手を試すこともできるのでは(cf.p.207)という考え方は,とても生活に活かせそうだ.リスクを取りやすくなりそうだ.
- 問い
将棋は,自分の定番で,本来なら「何もしない」のが最適解である場面が多いゲームと羽生さんは言う.(pp.71-72)私達は勝敗やルールの存在が不明確な人生ゲームで常に手を指しているが,人生において「何もしない」手の評価値はどのくらいか?僕は,とても高得点な気がしている.
将棋が強くなるために1番大事なことは,だめな手が瞬時にわかること(cf.p.73)だとして,では, 人生における,最善手と次善手の差はどのくらいか?囲碁の様に差が少ないのか,将棋の様に大きいのか?
人工知能には人間以上の倫理が必要になるだろう(cf.p.123)しかし,人間は「人間以上の倫理」を規定可能か?
西洋哲学史―近代から現代へ (岩波新書)
- 作者: 熊野純彦
- 出版社/メーカー: 岩波書店
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☆☆☆☆
- なぜ読んだのか
西洋哲学史を知るため.tknchさんのお薦め.
前著と同じく,何度も再読する機会があるだろう.
西洋哲学史―古代から中世へ (岩波新書)
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☆☆☆☆
- なぜ読んだのか
西洋哲学史を知るため.tknchさんのお薦め.
何度も再読する機会があるだろう.
人間さまお断り 人工知能時代の経済と労働の手引き
- 作者: ジェリー・カプラン,安原和見
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☆☆☆
- なぜ読んだのか
某学会の人工知能のシンポジウムで提題者がこの本の名前を挙げたので.
- 何が書いてあったか
18C後半から19C前半にかけての産業革命で人々は苦しんだ.いまは第3次革命で苦しんでいる人がいるが,これからは第4次革命で苦しむ人がより増大するのだろう.(cf.pp.26-27)
「コンピュータはプログラムされたことしかできない」は,1960年代のIBMのAI開発によって経営者や管理職の仕事を奪われることを心配したIBMの顧客に対するIBMのコーポレートプロパガンダだった.(cf.p.31) 広く流布し,信じている人が多い気がする.
「ヒューリスティック・プログラミング」の研究者たちによれば,探索空間の刈り込みの規則こそが 知能 これらの規則はその領域の専門家が体得してきたものであり,場数を踏み,さまざまな実体験を重ねる必要がある.(cf.pp.33-34)
重要なのはプログラムでなく,データ(cf.p.66)
投資会社やヘッジファンドの経営者たちは現代社会において最も物質的に報われて当然とみなされる職に恵まれた知能と技術を応用している(p.71 par.1 l.)
ときには余剰の労働者には全く適応できない場合もあり,その場合は新しい世代の労働者が育つのを待つしかない(cf.p.152)
適応できない場合もあるのか."待っている"から,プログラミング教育の義務化なのだろう.
自己の利益のために行動することが社会全体の利益になるという,資本主義経済の原則(p.202)を忘れていた.
チューリングが予想したのは、機械の能力のことというより、言葉の意味が受け入れられるということ.(cf.p.223)
あとがきで松尾豊氏は
「合成頭脳[Google, Facebook, Amazon が作っている人工知能]では日本は勝てないかもしれない」(p.268)
と言う.
- どう活かすか
人工知能の影響での貧困化に対する危機感が強くなった.技術の進展と社会動向をチェックし,柔軟に対処しながら,同時に人間存在を問い続ける必要がありそうだ.科学,数学の教養は必要だろう.