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テクノロジストの条件 (はじめて読むドラッカー (技術編))

テクノロジストの条件 (はじめて読むドラッカー (技術編))

テクノロジストの条件 (はじめて読むドラッカー (技術編))


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技術は、子孫の再生産に必要な25年という自然寿命を3倍にし、さらに10年を加えた。自然死が猛獣、疫病、飢餓、事故によるものだったことを忘れさせ、もっぱらそれを老衰によるものにした。

20世紀で最も収益率が良かった自動車ディーラーという小売業

21世紀に期待される偉業とは、知識労働の生産性を大幅に上げること。最も価値ある資産は知識労働者とその生産性である。

知識労働の生産性を向上させるための条件

  1. 仕事の目的を考える
  2. 働く者自身が生産性向上の責任を担う。みずからをマネジメントする。自律性をもつ。
  3. 継続してイノベーションを行う。
  4. みずから継続して学び、人に教える。
  5. 知識労働の生産性は量よりも質の問題であることを認識する。
  6. 知識労働者は、組織にとってコストではなく資本財であることを理解する。

6番目の条件以外は、肉体労働の生産性向上のための条件とはちょうど逆である。肉体労働では、質は制約にすぎず、最低の基準があるだけ。これに対し、知識労働における仕事の質は制約どころではなく、仕事の本質である。

知識労働の生産性を上げるために最初に行うことは、行なうべき仕事の内容を明らかにし、その仕事に集中し、その他のことはすべて、なくしてしまうことである。なすべき仕事は何か、何でなければならないか、何を期待されているか、仕事をするうえで邪魔なことは何かを問うことが必要である。

ベンチャーは自分の製品やサービスを、予期しなかった市場で、なじみのない客が予期しなかった使い方をするために買うことがあっても当然との前提で事業をスタートさせなければならない。予期せぬものを例外として片づけず、機会として調べなければならない。そして、企業は顧客のニーズを変えることで対価を得るのではないというマーケティングの基本を受け入れなければならない。企業は顧客のニーズを満足させることで対価を得る。

本田宗一郎は、マネジメント、財務、マーケティング、販売、人事を引き受けるパートナーが現れるまで、事業を本格化しなかった。この決心が、やがてホンダを成功に導いた。

規律のないところに自由はない。規律のない自由は放縦であって、やがて無秩序へと堕落する。あるいは時をおかずして独裁へと堕落する。イノベーションを行なう組織というものは、従来の組織とははっきり異なるという認識をもつことである。

機会の存在を示す指標としては、経済学者には1世紀以上前から知られている資本の生産性の低下がある。同一の生産を上げるのにより多くの資本を必要とするようになったとき、特に資本の増加が労働力の減少によって相殺されなくなったとき、その産業は下り坂となる。いかに繁栄し、利益を上げているように見えても衰退していく。昨日を延命させるためだけの絶望的な試みに浪費してしまう。

今後伸びる貿易は、特許やライセンスの貿易である。そのための戦略を学ばなければならない。自力で開発すべきものはなにか、売るべきものは何か、買うべきものは何か、どの段階で買うことに踏み切るべきか。日本は、技術の導入の仕方しか知らず、売り方は知らない。

イノベーションを行なう組織は、昨日を守るために時間と資源を使わない。

イノベーションについて発すべき問い

  1. これは正しい機会か? (最も重要)
  2. この段階で投入できる優れた人材と資源はどれだけあるか?
  3. 手を引くべきか、いかにして手をひくべきか

事業における予期せぬ成功はイノベーションの機会の兆候だ。 

 

イノベーションの機会(産業の内部)

  1. 予期せぬ事
  2. ギャップ
  3. ニーズ

イノベーションの機会(産業の外部)

  1. 人口構造の変化
  2. 新知識

人口総数、年齢構成、教育水準、職業分布、地域分布の変化がもたらすイノベーションの機会は、起業家の世界において最も実りが大きく、かつ最もリスクが小さい。

現代社会は、みずからの知識の基盤として理系、文系両方の人を必要とする。特に理系のことがわかる文系の人を必要とする。