物欲なき世界
- 作者: 菅付雅信
- 出版社/メーカー: 平凡社
- 発売日: 2015/11/04
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- この商品を含むブログ (2件) を見る
☆☆
僕はライフスタイルを商品化され、提案されたいとは思わない.
『キンフォーク』を欲しいと思わない
KINFOLK JAPAN EDITION VOL.11 (NEKO MOOK)
- 出版社/メーカー: ネコ・パブリッシング
- 発売日: 2015/12/01
- メディア: ムック
- この商品を含むブログを見る
「雑誌」が提案するライフスタイルは, 演出されていて, 嘘っぽい, 面白くない
「雑誌」というものを信頼していないので見たくない. ノイズにすぎない
自身[のライフスタイル]に不満がある人や, 他人[のライフスタイル]が気になる人が
雑誌や店に提案されたライフスタイルを参考にするのでは?
『キンフォーク』のような雑誌を家に置きたがる人が存在するのもわかる.
しかし, これからは(既にと言いたいが)他人を気にする時代とは思わないから
雑誌や店から"ファッション"(流行)のように提案されるライフスタイルに価値を見出す人は少ないのでは?
ローカルな喫茶店等からのライフスタイルの提案は理解出来る気もするが
「コンビニエントな時代には、ひとつのモノを所有することの喜びが薄くなって、感動が違うものになってきたんです。だから、そのモノを買って手にすると、その先にどんなハッピーが生活の中にあるかというところまで提案しなければいけない」(:37-38)
自社製品が生活を変えることを主張するappleのCMを思い出した
三越伊勢丹大西洋社長「百貨店業界がどうのこうのという話ではなくファッション=流行としての洋服を取り戻していかないと、ファッションの業界全体が縮小していってしまいます。・・・ 百貨店業界に対するスタンスとしては、もう一度ファッションとしての洋服を伸ばしていきたい。・・・
ファッションに対する感度が高い人々にもう一度購買欲を高めてもらうこと。服好きな人は六月から秋物・冬物を買うわけで、この人たちにもっとインプレッション[印象]を与えないといけない。」(:48)
ノームコア[究極の普通]に価値を見出した 若い "ファッションに対する感度が高い人々"は、もう一度購買欲は高まるのだろうか?
著者が『セックス・アンド・ザ・シティ』について「知性のかけらもない物語」(菅付雅信, 2015:239),「あの物欲の権化と思われたパーカーも、いち早くそこから抜けたのだ。」(菅付雅信, 2015:240)というように、
"服好きな人"というアイデンティティーは 若い人にとっては 恥ずかしい時代なのではないか?
三越伊勢丹の提案は、若い人 以外に向けたものだと聞こえる
深澤直人「モノの機能は利用するけど、自分が保有するという考え方がなくなっていくというのが、これからの潮流だと思っています。
・・・プロダクト・デザインは、もはや存在意義がなくなってしまう。そうした兆しが今、すでに現実になり始めているのです。」(:107)
37-38頁と近いことを言っているのでは
角川アスキー総合研究所主席研究員 遠藤諭「彼ら[若い人]が欲しているものがコンテンツに来ちゃった。・・・コンテンツは無料のものも多いし、物欲よりもはるかに自由にいじって楽しめるわけですよ。・・・ もちろんフィギュアを買う人もいますが、あれはレジンで固めた記号みたいなものでヴァーチャルなアイテムとたいして変わりません。」(:139)
イギリスの経済学者ロバート・スキデルスキー「友情はもはやアリストテレスが語ったような真剣な人間関係ではなくなり、余暇を楽しむための演出の一部に成り下がっている。」(:196)
余暇の過ごし方をコンテンツにし,承認欲求を満たす人がいることを思うと,友情が演出の一部, という考えにも納得出来る.
「日本は成長の限界にうまく適応することに関して、世界の先頭に立っているのです。」(:245)
このアドバンテージを使うことなく,適応の限界を超えるのでは?
社会を生きていくには, 人として柔軟でないとならない, ということを痛切に感じた.
本自体はメイカームーブメント、シェア、ビットコイン、タックスヘイブン、『21世紀の資本』などの2014,15年に注目されたワードが多く 意識の高い大学生の居酒屋トークを聞かされたようだった.