book review

what you see is all there is

悪童日記

悪童日記 (ハヤカワepi文庫)

悪童日記 (ハヤカワepi文庫)

☆☆☆☆

 第二次世界大戦末期のハンガリーと思しい場所に疎開した幼い双子の兄弟が,
ナチズムからスターリニズムによる全体主義体制への移行の中で,
日々の見聞と体験を忠実な描写によって記録した「作文」のかたちの小説.

“兎っこ"が山羊の乳房を吸って乳を飲み,口を手の甲で拭う場面(p.39)が妙に記憶に残った.

 かれら双子のようなたくましい子供が居る点と,
多くの人が愛と現実逃避を求めている点は未だに変わらない.
かれらは殺伐たる現実から眼をそらさない.
現代のぼくらは現実逃避をしているのではないだろうか.