フランケンシュタイン (光文社古典新訳文庫)
- 作者: メアリーシェリー,Mary Shelley,小林章夫
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2010/10/13
- メディア: 文庫
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☆☆☆
なぜ読んだのか
自己と他者について考えるヒントになるかと思い読了.何が書いてあったか
怪物の葛藤が興味深い.
「こちらの心がわかる女をつくってほしい。」(p.258)
怪物は他者について無知だ.他者は当然,自己でさえ,こちらの心はわからないからだ.
「村人たちの感覚は欠乏と極貧のために麻痺していました。(中略)食べ物や衣服を恵んでやっても、ほとんど礼も言わないのです。苦労というものは、人間の最低の感覚すら鈍らせてしまうのです。」(p.291)
現代人も苦労で感覚が鈍っている人は多いと感じる.
フランケンシュタイン博士は,ほかの人間なら成功するかもしれないと言いつつ,
「平穏のなかに幸福を見つけてください。科学や発見で名をあげようと、野心を持つことはやめたほうがいい。(中略)」(p.390)
と言う.問題が問題を産むが,今は科学でしか解決出来ない問題もある.野心を持たず,愛情や美徳を愛する心で現代の問題を解決可能だろうか?
被造物(creature)である怪物は,
「おれの心はもともと愛情と共感を受け止めるようにできている」(p.393) 「美徳を愛する心、幸福と愛情がおれの身体全体に溢れている」(p.395)
しかし
「堕ちた天使は悪辣な悪魔になる」(p.396)
と言う.私も,悪辣な悪魔になっていないだろうか?
怪物にシンパシーを感じずにはいられない.孤独になっても本質的にやさしい存在であり続けたい.