book review

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人工知能はどのようにして 「名人」を超えたのか?―――最強の将棋AIポナンザの開発者が教える機械学習・深層学習・強化学習の本質

☆☆☆

  • なぜ読んだのか
     著者の思想が気になり読了

  • 何を学んだか

著者は,人工知能の開発に「教師あり学習」は必須で,それをぜひ覚えておいてください(p.130)と言うが,アルファゼロは「教師なし学習」であり,この説はあっさりと覆された.本書発行日からアルファゼロ発表まで僅か約7ヶ月で変化は速い..

ゲーム中に現れる局面の数が 1060 のオセロもまだ完全解析できていない.将棋は226乗,囲碁は360乗 (p.46)

人工知能に仕事を奪われるとよく聞くが,人間から機械へ交代する際は 一気 に進むだろう(p.68, p.118)

ディープラーニングの黒魔術たちは過学習を防ぐことを大きな目標としているものが多いようだ(p.99)

著者は,人工知能の開発に「教師あり学習」が必須ということをぜひ覚えておいてください(p.130)と言うが,「教師なし学習」のアルファゼロに覆された.アルファゼロ発表まで僅か約7ヶ月.変化が早い.

この本の中では,知能を目的に向かう道を探す能力(p.171)と定義し,『知能とは画像である』,『画像が知能の本質』」(p.107)と言うが,この命題は目が先天的に見えない人が画像という概念を理解していなければ知能が無いことになりはしないか?
目が見えない人も知能[目的に向かう道を探す能力]はあると思うので,この命題は言えないのではないだろうか.

アルファ碁は,ディープラーニング版打ち手予測器の対局3,000万回の結果から,「ディープラーニング版評価」に相当する勝敗予測器の作成を始めた(p.159)

「おそらく今後も、プログラムが動的に中間の目的を構築するようになるコードを書くことは不可能(中略)今のプログラミング言語は、人間に作られた、人間の都合に合わせたもので、人間の思考の限界を超えることはできない」(p.180)

やはり思考は言語に縛られているかもしれない だとすれば人工知能プログラミング言語に縛られている

人間の理解を超えた人工知能に対しての「いい人理論」(p.200)は人間達の気休め程度にしかならず,問題解決には至らないのでは.

「論文によると,アルファ碁は次の相手の手を予想するのに,8手前くらいまで考慮するようになってたはず」(p.234)

人間の判断には,物語,歴史が大事なのかもしれない.では,どの位前の物語を考慮するべきか?

水平線効果とは
プログラムが読める手には限りがあり,その先を水平線の先にあるもののように考慮せずに,長期的に見ると問題がある手を選択してしまう問題(p.261)

コンピュータは論理が弱い,本当の意味での論理力は足りておらず,論理力は人間のほうがある(p.263)

「本当の論理力をつけるプログラムの書き方は,今の時点ではわかりません」(p.264)

ディープラーニングは社会や人間が感じていた様々な閉塞感を打ち破った. コンピュータに本当の意味での論理力が足りないということが,これから少しの間,人工知能の問題になりそうだ.そして,著者の言うように 「人間に残されたのは,言葉と論理しかないんじゃないかな」(p.283)なのだろう.

  • どう活かすか
    現実の世界でのシミュレート(未来を読む)は難しいので,実際に少し手を進め,未来を見ながら考えれば良いのかもしれない. その意味で,人生は多分,誰かが敵となり,負かしに来ることは稀で,自分が負けの局面を作ってしまう気がする.
    形勢判断とそれによる攻守の切り替えのバランスが大事だろう.最も,人生ゲームの「勝ち」とは何かが重要だが.

人工知能が抽象的な学習をすることで,人間の生が色々と困難になっても変化できない人間が多いと思う(p.259)

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