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不合理だからすべてがうまくいく

不合理だからすべてがうまくいく―行動経済学で「人を動かす」

不合理だからすべてがうまくいく―行動経済学で「人を動かす」


☆☆☆☆

第1章のまとめ

  • ふつう報酬が高くなるほど成績も上がるように思うが、高すぎる報酬は、逆効果になることがある。とくに単純な課題よりも、認知スキルが要求される課題の場合に、この傾向が強い。
  • 金銭的報酬だけでなく、社会的報酬(人に認められる)などについても同じ。
  • ここいちばんの正念場で、モチベーション過剰が裏目に出て、力を発揮できないという、人間の不合理性を考慮して、最高の成績を生み出す工夫をしよう。

第2章のまとめ

  • 仕事に意味があるかないかで(どんなささやかな意味でも)、モチベーションに大きなちがいが生じる。
  • 仕事へのやる気を奪うのは驚くほど簡単だ。しかし、逆に、仕事へ意味を与えることで、モチベーションを高める機会があるともいえる。

第3章のまとめ

  • 労力をかけて何かをこしらえると、その作品に愛着を感じ、過大評価するようになる(イケア効果)。
  • イケア効果は、組み立て家具やケーキミックスでつくったケーキのような「セミホームメード」にも生じる。
  • ただし作品を最後まで完成させないと、イケア効果は満喫できない。
  • カスタマイゼーションの手間と、お手軽さとのバランスをうまく図れば、顧客が大きな価値を見いだす製品が生み出せる。
  • プロジェクトに時間や労力をかけることで、モチベーションを高めることも可能だ。

第4章のまとめ

  • 自分で生み出したアイデアには愛着を感じ、高く評価してしまう(自前主義バイアス)。
  • 自前主義バイアスは、自分で考えたという思いこみでも生じる。
  • 愛着が過ぎると、他人の優れたアイデアを排除してしまうおそれがある。
  • 自前主義バイアスを利用して、目の前の課題に打ちこめるよう、工夫できる。

第5章のまとめ

  • 復讐は人間の奥深い本能だ。
  • この本能は不合理だが、社会の信頼関係を保つ働きがある。
  • 顧客による報復は、企業に大きなダメージを与えることがある。顧客をなだめるメリットは大きい。
  • 復讐心をバネに成功する人も多い。

第6章のまとめ

  • 人生を変えるほどの大きなできごとにも、いつか順応する。
  • よいことが起きても思ったほど幸せにはならないし、悪いことが起きてもそれほど不幸にはならない。
  • 順応するプロセスを中断すると、順応が遅くなる。これを利用して、厄介なことは一気に片付け、楽しいことは休み休みやれば、満足度が大いに高まる。

第7章のまとめ

  • 容姿に恵まれた人同士、恵まれない人同士で付き合うことが多い。
  • 容姿に恵まれない人は、外見以外の魅力を重視することで、現実に順応する。

第8章のまとめ

  • 人間の不合理な性質を考慮に入れない、商品やサービス、市場は必ず失敗する。
  • 現代のゆゆしい市場の失敗の一つが、恋愛・婚活市場だ。オンラインデート・サイトの問題点は、人を検索可能な商品のように扱うことにある。
  • 人間にできること、できないことに合った構造をもたせれば、もっと役に立つ市場に変えられる。

第9章のまとめ

  • 人はおおぜいの苦しみより、一人の苦しみの方に心を動かされるようにできている。(顔のある犠牲者効果)
  • 心理的に近い存在、鮮明なできごと、自分の行動が大きなちがいを生むという確信が、感情のスイッチを入れ、人助けの行動を促す。
  • 合理的思考は感情移入を阻害する。
  • ただし感情に動かされた行動が、適切とは限らない。

第10章のまとめ

  • 感情はすぐ消えるが、いっときの感情にまかせた決定が、長い間にわたって行動を左右することがある。
  • まったく無関係な感情でさえ、決定に影響をおよぼす
  • 強い感情にとらわれているときは、決定を下さないのが賢明だ。

人間の進化は、技術の発達にはとうてい追いつけない。かつては役に立った本能や能力が、いまではわたしたちま足を引っ張ることも多い。いまや、わたしたちの生命に重大で深刻な影響がおよびかねない。

大切なのは、自分のいちばんよい面を引き出し、悪い面が出ないよう心がけることだ。

いま下す決定は、いま起きていいることだけに影響を与えるのではない。将来下すであろう、たくさんの似たような決定にも、影響をおよぼし続けるかもしれないのだ。