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ファスト&スロー (上): あなたの意思はどのように決まるか?

ファスト&スロー (上): あなたの意思はどのように決まるか?

ファスト&スロー (上): あなたの意思はどのように決まるか?


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みんなの意見は案外正しい、という誤差収斂の魔法が働くのは、観察や評価が個別に行われ、エラーに相関性が無い場合に限られる。もし回答者が同じバイアスを持っていたら、多数の判断を集めてもバイアスは減らない。

私たちの頭の中にある世界は、現実の世界の複製ではない。

感情ヒューリスティックでは、人間は好きか嫌いか、あるいは感情反応が強いか弱いかでものごとを決めてしまう。悪い結果を見越して「健全な恐れ」を抱くことができないのは、我が身を危うくする欠陥と言える。

無価値の情報は、その情報がまったくないものとして扱わなければならない。受け取った情報をただちに却下するのでない限り、あなたのシステム1は手元の情報を正しいものとして自動的に処理する。情報の信頼性に疑問を抱いた時にすべきことは、確率の見積もりを基準値に近づけること。

私たちの頭は因果関係を見つけたがる強いバイアスがかかっており、「ただの統計」はうまく扱えない。

直感的予測は平均回帰を無視しており、したがって不可避的にバイアスがかかるので、必ず修正が必要である。

私たちはみんながみんな合理的なわけではない。中には、偏った予想を絶対確実と考えたがる人もいることだろう。だが、極端な予想を受け入れて自分で自分を欺くなら、自分の身勝手をよく承知しておかなければならない。

人間は過去について根拠薄弱な説明をつけ、それを真実だと信じることによって、のべつ自分をだましている。

私たちは、人生で信じていることのうち最も重要ないくつかについては、何の証拠も持ち合わせていない。ただ愛する人や信頼する人がそう信じている、ということだけが拠りどころにになっている。自信を持つことはたしかに大切ではあるが、私たちが知っていることがいかに少ないかを考えたら、自分の意見に自信を持つなど言語道断と言わねばならない。

平均的には最も活発な投資家が最も損をし、取引回数の少ない投資家ほど儲けが大きい。論文「投資は富を脅かす」より

男は無益な考えに取り憑かれる回数が女よりはるかに多く、その結果、女の投資実績は男を上回る。論文「男は度し難い」より

予測不能な状況で直観が正しいと主張するのは、よくて自己欺瞞であり、悪くすれば悲惨な結果を招きかねない。一定の規則性が存在しない状況では、直観は信用できないのである。

資本主義の原動力は、自信過剰や楽観バイアスという認知的錯覚にある。