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ボナンザVS勝負脳―最強将棋ソフトは人間を超えるか (角川oneテーマ21)

ボナンザVS勝負脳―最強将棋ソフトは人間を超えるか (角川oneテーマ21)

ボナンザVS勝負脳―最強将棋ソフトは人間を超えるか (角川oneテーマ21)

☆☆☆☆
人工知能と人間の思考の差異に興味があり読了。

将棋は2人のゼロ和ゲーム、指し手の数は有限、サイコロを降るといった偶然性が入らない(確定ゲーム) 、すべての情報が両者に知らされていること(完全情報)だ。

制御理論.対象に作用するものいかに制御するかということが重要になる.それらをどのように与えれば,あるいは状況をどのように変化させれば,望むべき方向にその対象を進めることができるかを考えるわけだ.
まず制御したい対象がある.その対象が時間とともに,どのように変化するかがわかれば,どのようにその対象を操作すれば,望むようなもの,状態になるかを考えることができるわけである.
では他の人はなぜ全幅探索を用いなかったのであろうか。本当のところはわからないが、全幅探索は人間の直感というものに反する、まさに機械的な手法だからなのではないだろうか。

人間の直感は経験や知識をベースに可能性が高いと思われる手についてのみ重点的に考えるものだ。

全幅探索の場合、ハードの処理能力が伴わないと難しいということがいわれる。実はこの認識は正しくない。むしろ選択的探索の方がハードの能力が必要とされる。プログラムがより複雑になる分、ハードに負荷がかかるからだ。その点、 全幅探索は単純なアルゴリズムに依拠して成り立つ。
人間が見たら第一感、脆そうな構えなのに崩すとなると以外にやっかい。コンピュータは先入観がないから、これまでの常識で判断するのは危険ということがわかった。
相手が人間とは違うコンピュータだとどのような考え方をするべきか。まず人間同士の戦いでは、相手が間違えることを期待して指す。ところが相手がコンピュータでは間違い、特に心理的なプレッシャーからくる判断ミスを期待することはできない。
疲れを知らないコンピュータは過去を引きずらない
コンピュータが読みの絶対量で勝負しているように、人間も読みの力と実力が比例してくるともいえる。
読みの力というのは量と深さと正確さの三要素に分類できる。 3つの要素はそれぞれ密接に関連していて、量を多く読めば読むほどひとつひとつの正確さは落ちてくる。読みの全体量をカットできれば、残された少ない選択肢の手だけ深く読めばいいので、正確さは高まる。
余分な手を切り捨てていく場合、いい手、悪い手という以前に、自分が嫌いだと思った手ははなから読まない。嫌いな手というのはその手自体が悪手というわけではなく、その後に予想される展開が、自分の好みに合わないということである。
戦型もできるだけ相手の苦手とするものを選ぶ。いつも同じことばかりやっていて高い勝率を上げている人は今の将棋界にはほとんどいない。ルールの範疇なら相手に嫌がられることをやっていかなければ勝負に勝つことはできない。
私は直感に関してはその人の持つ才能が大きく影響し、鍛え方も難しいと思っている。それでも直感の悪さが将棋を指す上で致命的な不利になるということはない。
大局観の違いが生じる理由は、今の実力を得るまで何を勉強してきたかとか、どんな人に教わったとか、成長過程におけるいろいろな要素が関係していると私は考える。よく「大局観が悪い」と言われる人は、急所で明らかに大筋の方針を間違ってしまう。
正確に読むことができるようになれば感情が入らない分、コンピュータの方が人間よりも上ということになる。
質が変化する前には量の積み重ねが必ずある。水が沸騰するときと似たようなものだ。不要な情報は、一段高いレベルに達してみれば、自然に自分の知識の中から省かれていく。
すべての読みの基本は3手正しく読むこと。