人間さまお断り 人工知能時代の経済と労働の手引き
- 作者: ジェリー・カプラン,安原和見
- 出版社/メーカー: 三省堂
- 発売日: 2016/08/11
- メディア: 単行本
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☆☆☆
- なぜ読んだのか
某学会の人工知能のシンポジウムで提題者がこの本の名前を挙げたので.
- 何が書いてあったか
18C後半から19C前半にかけての産業革命で人々は苦しんだ.いまは第3次革命で苦しんでいる人がいるが,これからは第4次革命で苦しむ人がより増大するのだろう.(cf.pp.26-27)
「コンピュータはプログラムされたことしかできない」は,1960年代のIBMのAI開発によって経営者や管理職の仕事を奪われることを心配したIBMの顧客に対するIBMのコーポレートプロパガンダだった.(cf.p.31) 広く流布し,信じている人が多い気がする.
「ヒューリスティック・プログラミング」の研究者たちによれば,探索空間の刈り込みの規則こそが 知能 これらの規則はその領域の専門家が体得してきたものであり,場数を踏み,さまざまな実体験を重ねる必要がある.(cf.pp.33-34)
重要なのはプログラムでなく,データ(cf.p.66)
投資会社やヘッジファンドの経営者たちは現代社会において最も物質的に報われて当然とみなされる職に恵まれた知能と技術を応用している(p.71 par.1 l.)
ときには余剰の労働者には全く適応できない場合もあり,その場合は新しい世代の労働者が育つのを待つしかない(cf.p.152)
適応できない場合もあるのか."待っている"から,プログラミング教育の義務化なのだろう.
自己の利益のために行動することが社会全体の利益になるという,資本主義経済の原則(p.202)を忘れていた.
チューリングが予想したのは、機械の能力のことというより、言葉の意味が受け入れられるということ.(cf.p.223)
あとがきで松尾豊氏は
「合成頭脳[Google, Facebook, Amazon が作っている人工知能]では日本は勝てないかもしれない」(p.268)
と言う.
- どう活かすか
人工知能の影響での貧困化に対する危機感が強くなった.技術の進展と社会動向をチェックし,柔軟に対処しながら,同時に人間存在を問い続ける必要がありそうだ.科学,数学の教養は必要だろう.