book review

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人工知能の核心 (NHK出版新書 511)

人工知能の核心 (NHK出版新書 511)

人工知能の核心 (NHK出版新書 511)

☆☆☆☆

  • なぜ読んだのか
     羽生さんの人工知能の認識に興味があり読了.実は期待していなかったが, TensorFlow, Torch, Chainer (p.179)や,D-Wave(p.173)にも言及していて驚いた. 「Recurrent Neural Network」(p.144)等も理解しているようだ. 一方で,おわりに『攻殻機動隊』(p.229-231)にも触れていた.
    羽生さんの整頓された整頓された思考から「エンジニアであった父」(『捨てる力 (PHP文庫)』p.139)の存在を感じる.
    ディープマインド社とCEOのハサビス氏,「AlphaGo」を理解するための貴重な資料でもある.

ディープマインド社CEOハサビス氏の言葉
「人間の知性をコンピュータで再現することは可能」(p.104)
「脳が行っている作業で人工知能が行えないものはないはず」(p.172)
「森羅万象を説明できる」(p.231)

  • 何が書いてあったか
      人工知能の日進月歩の開発速度を強く感じた.
    この本の企画から,今までにあった出来事を少しまとめる.
2015年 本書の元となる,NHKスペシャル「天使か悪魔か 羽生善治 人工知能を探る」番組制作開始
2016年2月 著者,取材班,ディープマインド社取材
2016年3月 ディープマインド「AlphaGo」にイ・セドル氏敗北
2016年5月 NHKスペシャル「天使か悪魔か 羽生善治 人工知能を探る」放送
2017年3月 本書第一冊発行
2017年5月 第2期 電王戦 PONANZA に佐藤天彦名人敗北
2017年12月5日 羽生棋聖 永世七冠達成
2017年12月5日 ディープマインド「AlphaZero」 最強将棋プログラムelmoとの100局において、90勝8敗

2017年12月5日に発表される,AlphaGoZero の汎用化を羽生さんはこの本の中で,読んでいるかのようだった.

「もし,アルファ碁の探索の設定が詳らかになれば、将棋やチェスにも応用できる可能性があるのかもしれないと、考えています。そして、それが何を意味しているのかというと、チェスや将棋や囲碁は、競技としては違うけれども思考のロジックには共通のプラットフォーム(基盤)があるかもしれない、という可能性です。異なったルールであっても、思考や論理的な考え方そのものには、突き詰めると、根本的なところで共通するものが存在する。もしそうなら、それは「知性」そのものの汎用性を考える契機にはならないでしょうか。」(p.34)


AlphaGoは二段階で手を絞る(p.58)
1. 次の手を絞る(Value Network)
2. 局面ごとに,何手先まで読むのがふさわしいか判断(ポリシーネットワーク)


棋士の手の絞り方の第一のプロセスである「直観」のイメージが

「カメラで写真を撮る際、ピントを合わせるように、「これこそが問題の中心だ」と思うところにフォーカスしていくイメージ」(p.66)

は,具体的でわかりやすい.(p.66)

ここでいう「直観」とは「経験や学習の集大成が瞬間的に現れたもの」あるいは「今,自分はどこにいてどの方向に進めばいいのか」を大まかにつかむ"羅針盤"のようなもの.これまでの歩みやストックしているデータによって裏づけられている(cf.p.66)

「大局観」を使い,一手一手を検討することからあえて離れ,序盤から終盤までの流れを総括し,先の戦略を考える(cf.p.68)

羽生さんは,棋士が手を選ぶ行為は,美意識を磨く行為とほとんど同じと考えていると言い, 「美意識」を磨くことが将棋の強さに関わると言う.(pp.75-76)
人生においても,手を選択するために,「美意識」を磨いていきたい.
 しかし,人工知能が示すように,われわれが「美意識」のなかでは認識できていない他のところに,確度の高い選択肢がある可能性(cf.p.82)があることを忘れてはならず,同時に人間は人工知能の影響を受け,美意識を変えていくのだろう(cf.p.97)

 人工知能は正解を出す確率を上昇させているだけで100%正確,絶対的ではない.
しかし,僕も人間は人工知能を「信じていってしまう」と予測している.(cf.p.197)
それは,占いや宗教の信奉に似ているかもしれない.
だが,羽生さんが言うように,人工知能の判断を「絶対である」と信じないこと(cf.p.200)「絶対である」ではないこと,を知っておくべきと考える.


  • 何を学んだか
     改めて「大局観」を理解できた.
    人工知能の判断がブラックボックスであることが,やはり大きな問題だ.
    人工知能は両刃の剣だ.どちらに転ぶかはわからない.(cf.p.231) しかし,開発を止めることは出来ないだろう.「できるところから開発する」(p.175)無邪気さは,人間存在の本来の姿ではないだろうか.

  • どう活かすか
     私達は常に手を指している,勝敗やルールの存在が不明確な人生ゲームにも「直観」「読み」「大局観」は活かせる.
    評価値の値を知っておくことで,大胆な形の手を試すこともできるのでは(cf.p.207)という考え方は,とても生活に活かせそうだ.リスクを取りやすくなりそうだ.

  • 問い
     将棋は,自分の定番で,本来なら「何もしない」のが最適解である場面が多いゲームと羽生さんは言う.(pp.71-72)私達は勝敗やルールの存在が不明確な人生ゲームで常に手を指しているが,人生において「何もしない」手の評価値はどのくらいか?僕は,とても高得点な気がしている.
       将棋が強くなるために1番大事なことは,だめな手が瞬時にわかること(cf.p.73)だとして,では, 人生における,最善手と次善手の差はどのくらいか?囲碁の様に差が少ないのか,将棋の様に大きいのか?

 人工知能には人間以上の倫理が必要になるだろう(cf.p.123)しかし,人間は「人間以上の倫理」を規定可能か?

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス

西洋哲学史―近代から現代へ (岩波新書)

西洋哲学史―近代から現代へ (岩波新書)

西洋哲学史―近代から現代へ (岩波新書)

☆☆☆☆

  • なぜ読んだのか
     西洋哲学史を知るため.tknchさんのお薦め.

前著と同じく,何度も再読する機会があるだろう.

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス

西洋哲学史―古代から中世へ (岩波新書)

西洋哲学史―古代から中世へ (岩波新書)

西洋哲学史―古代から中世へ (岩波新書)

☆☆☆☆

  • なぜ読んだのか
     西洋哲学史を知るため.tknchさんのお薦め.

何度も再読する機会があるだろう.

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス

人間さまお断り 人工知能時代の経済と労働の手引き

人間さまお断り 人工知能時代の経済と労働の手引き

人間さまお断り 人工知能時代の経済と労働の手引き

☆☆☆

  • なぜ読んだのか

 某学会の人工知能のシンポジウムで提題者がこの本の名前を挙げたので.

  • 何が書いてあったか

18C後半から19C前半にかけての産業革命で人々は苦しんだ.いまは第3次革命で苦しんでいる人がいるが,これからは第4次革命で苦しむ人がより増大するのだろう.(cf.pp.26-27)

「コンピュータはプログラムされたことしかできない」は,1960年代のIBMのAI開発によって経営者や管理職の仕事を奪われることを心配したIBMの顧客に対するIBMのコーポレートプロパガンダだった.(cf.p.31) 広く流布し,信じている人が多い気がする.

ヒューリスティック・プログラミング」の研究者たちによれば,探索空間の刈り込みの規則こそが 知能 これらの規則はその領域の専門家が体得してきたものであり,場数を踏み,さまざまな実体験を重ねる必要がある.(cf.pp.33-34)

重要なのはプログラムでなく,データ(cf.p.66)

投資会社やヘッジファンドの経営者たちは現代社会において最も物質的に報われて当然とみなされる職に恵まれた知能と技術を応用している(p.71 par.1 l.)

ときには余剰の労働者には全く適応できない場合もあり,その場合は新しい世代の労働者が育つのを待つしかない(cf.p.152)
適応できない場合もあるのか."待っている"から,プログラミング教育の義務化なのだろう.

自己の利益のために行動することが社会全体の利益になるという,資本主義経済の原則(p.202)を忘れていた.

チューリングが予想したのは、機械の能力のことというより、言葉の意味が受け入れられるということ.(cf.p.223)

あとがきで松尾豊氏は

「合成頭脳[Google, Facebook, Amazon が作っている人工知能]では日本は勝てないかもしれない」(p.268)

と言う.

  • どう活かすか

 人工知能の影響での貧困化に対する危機感が強くなった.技術の進展と社会動向をチェックし,柔軟に対処しながら,同時に人間存在を問い続ける必要がありそうだ.科学,数学の教養は必要だろう.

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス

人類の未来―AI、経済、民主主義 (NHK出版新書 513)

☆☆☆

  • なぜ読んだのか
     訳者の本が好きなので読了.

  • 発見

レイ・カーツワイル

「これからは、資源が余る時代に移行していく。(中略)余剰の時代」(p.110)

「ディープ・ニューラル・ネットワークなどは、人間の脳の働き方とは少し違う」(p.115)

AI には2つの学派がある (p.123)

シンボル派 ニューラルネット
全てを論理的に分析するやり方 コネクショニスト
マービン・ミンスキー ローゼンブラット

「何十億,何百億という巨大な情報の山を,100層のニューラルネットに流し込んで、求めている1本の針を探し出すことができる」(pp.124-125)

我々の生涯に最も影響があるのは、文化やテクノロジーの進化 (p.126)

マーティン・ウルフ

金融部門はリスクを追うことが仕事になっている.
本質的に不確定な将来について決断をすることが金融の仕事 (p.172)

経済学は物理学の正反対の位置にいる.経済学は基本的に,歴史にわずかな論理を加味したもの (p.210)

平衡を得るために理性と感情の均衡を保つ (p.221)

グローバリゼーションとEUの考察が,初めて知ることばかりで楽しめ,右翼政党の台頭の理由も理解した.

マーティン・ウルフの推薦図書

西洋哲学史 1―古代より現代に至る政治的・社会的諸条件との関連における哲学史 (1)

文庫 銃・病原菌・鉄 (上) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)

文明崩壊 上: 滅亡と存続の命運を分けるもの (草思社文庫)

サピエンス全史(上)文明の構造と人類の幸福

ローマ帝国衰亡史〈5〉第31‐38章―アッティラと西ローマ帝国滅亡 (ちくま学芸文庫)

フリーマン・ダイソン

経済モデルは実際の経済にはまったく無力.現在の経済を理解するうえでは役立つが,予測には無力. 部分を研究するには役立つが全体を把握するには大きな問題がある.(cf.pp.266-267)


  • どう活かすか
      既にレイ・カーツワイルの言う余剰の時代ではないだろうか. 生産物,時間,人的リソース,能力が余っている.余剰を上手く利用すればいい.
    現代は忙しさを理由に,ファクトチェックをせず,権威を信じやすい危険な時代だ.
    情報で混乱しないよう,整理が重要だろう.
    未来に対する決断はやはり,極力括弧に入れたい.

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス

この世界の片隅に 下

この世界の片隅に 下 (アクションコミックス)

この世界の片隅に 下 (アクションコミックス)

☆☆☆☆

  • 何が書いてあったか

晴美は,生きている人の心の中で生き続けるのだろう.周作のお母さんは,孫の晴美の死を詰ることなく,義理の娘であるすずを労わる.(p.42)

すずは,家が焼けて欲しいと願うが,周作からの「この家を守りきれるかの」という言葉を思い出し,焼夷弾を消化する.(p.48)

生きていてくれて良かった(cf.p.55)とは,あなたが死ぬのは私は嫌だ,ということなのか? ここで,後にすずが思う,どこがどう良かったか判らない,という問いを感じた.そして「鬼いちゃんが死んで良かったと思ってしまっている」(p.62)すずの気持ちも解る.歪んでいるのかもしれないけど,人間は歪んでいる存在だとも思う.

能動的に生きる径子は受動的に見えるすずの人生がつまらないだろうと思っていた.だから,イヤになったらいつでも往け(広島に帰れ)ばいいと思っていた.(cf.p.75) ここに愛を感じる.そして,経子の「自分で決め」は,すずに何を考えさせたか?

玉音放送で当時は「神」の天皇の声をほとんどの国民は初めて聞いた.「神」が「まるで人間の声」で日本語をしゃべるのは驚きだったろう.それに比べ,今の天皇は一気に身近な存在になったのだな.(p.92)

台風=神風 だったのか(p.104)

原爆投下から4ヶ月経っても,広島では人を探していたのだな.顔は,自分が探している人に見えてしまう.(p.129) 311の福島もそうだったのかもしれない.

リンも最終回の子も孤児だ.苦労した孤児は多かっただろう.人が人を育てるのは難しい.(p.141)

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス

消費社会の神話と構造 普及版

消費社会の神話と構造 普及版

消費社会の神話と構造 普及版

☆☆☆

  • なぜ読んだのか
     勉強会のために読了.

  • 何が書いてあったか
     相手が居たら面白いかな,居たほうがいいかな,と交際相手や婚約相手を"欲す"るのは,人間を暇を潰すために消費するモノとして扱っているということだ.
    しかし,現代の日本ではこのような人がほとんどだと思う.ルシクラージュ(recyclage)と疲労の現象もよく見られる.

  • どう活かすか
    疲労していないことが武器になる (cf.p.279)

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス