book review

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この世界の片隅に 下

この世界の片隅に 下 (アクションコミックス)

この世界の片隅に 下 (アクションコミックス)

☆☆☆☆

  • 何が書いてあったか

晴美は,生きている人の心の中で生き続けるのだろう.周作のお母さんは,孫の晴美の死を詰ることなく,義理の娘であるすずを労わる.(p.42)

すずは,家が焼けて欲しいと願うが,周作からの「この家を守りきれるかの」という言葉を思い出し,焼夷弾を消化する.(p.48)

生きていてくれて良かった(cf.p.55)とは,あなたが死ぬのは私は嫌だ,ということなのか? ここで,後にすずが思う,どこがどう良かったか判らない,という問いを感じた.そして「鬼いちゃんが死んで良かったと思ってしまっている」(p.62)すずの気持ちも解る.歪んでいるのかもしれないけど,人間は歪んでいる存在だとも思う.

能動的に生きる径子は受動的に見えるすずの人生がつまらないだろうと思っていた.だから,イヤになったらいつでも往け(広島に帰れ)ばいいと思っていた.(cf.p.75) ここに愛を感じる.そして,経子の「自分で決め」は,すずに何を考えさせたか?

玉音放送で当時は「神」の天皇の声をほとんどの国民は初めて聞いた.「神」が「まるで人間の声」で日本語をしゃべるのは驚きだったろう.それに比べ,今の天皇は一気に身近な存在になったのだな.(p.92)

台風=神風 だったのか(p.104)

原爆投下から4ヶ月経っても,広島では人を探していたのだな.顔は,自分が探している人に見えてしまう.(p.129) 311の福島もそうだったのかもしれない.

リンも最終回の子も孤児だ.苦労した孤児は多かっただろう.人が人を育てるのは難しい.(p.141)

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